「田んぼ」は生きるエネルギーを生み出す装置

2020/10/05

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 Vol.05 『サードハウス』 

米づくりだけを業(なりわい)としていくことはむずかしくなったいま、どうやって田んぼを守ればいいのでしょうか?


美しい里山の風景、と言われても

日本の、そして日本人の原風景として里山をあげる方も多いと思います。雑木林や丘の間に広がる田んぼ。雑木林を鎮守の森とする神社があり、近くを小川が流れ、遠くには山が見えて、道端にはお地蔵さんがいて、いろんな花が咲き、、、といった風景は、私にとっては小さいころをすごした田舎町の風景として記憶に刻まれています。

一方で、都会に住む方が憧れるような、「いいところだね」と言いたくなるようなこうした里山ほど、住民の過疎化、高齢化、農家の後継ぎ問題などで、維持していくのがむずかしくなっています。そこに住んでいない人ほど、「この風景を残してほしい」と無責任に口にしますが、それは里山の人にだけ重荷を背負わせるようなもの。里山側だけでは、どうにもできないケースが増えてきているのに、「だったらあなたが移住すれば?」と言われてしまいます。里山の風景を残してほしいという気持ちがあっても、そこに住んで農業をやろうとまでは、なかなか決断できないでしょう。でも、その気持ちをなんとか里山の維持に活かす方法はないでしょうか?


まずは通ってもらう

住むことはむずかしくても、週に1回、いや月に1回でも、里山に遊びに行くという感覚なら、続けることができるのでは?行ってみるとわかりますが、「田んぼはやさしい」のです。田舎暮らしを経験したことがない方でも、なぜか懐かしい気持ちになります。最初は癒されるようなかんじで始めていただき、訪れるたびに農作業をお手伝いすることで地元の方々とふれ合う。そこで田んぼの一部をお借りして、自家用の米をつくらせていただく。自家用なら、田植え後はそれほど手間はかかりません。月に2回くらい通えば、稲はなんとか育ちます。どうしても行けないときもあると思いますので、数家族で分担して通うようにしてもいいと思います。


家は必須アイテム

その際、里山側には空き家となっている家を開放していただくなど、通いやすい環境づくりに協力いただきたいところです。ちょっと休憩できる場所は必須!トイレや水道も使いたいですし、できれば食事も里山で取りたいです。毎回、使う道具なども置かせていただけるような、拠点になる場所です。まずは休憩所としての家ですが、通い慣れてきたら宿泊施設に。こうして少しずつ滞在期間を延ばしてもらいます。拠点となる家があるとないでは、気持ちに大きな差が出ます。宿泊は農家の方が民泊で提供してもいいと思います。簡単ではありませんし、時間はかかると思いますが、こうして里山に通う人が増えることで、田んぼをなんとか維持できるのではないかと考えています。


サードハウスという生き方

スターバックスコーヒーは自らのカフェを自宅でも会社でもない「サードプレイス」と定義しています。前述の拠点となる家を、自宅でも両親が住む実家でもない、『サードハウス』と呼びたいと思います。もう1つの家を持つことは、生き方の選択肢を増やすことにつながります。コロナ禍でテレワークが進むなか、郊外に移り住む人も出てきましたが、いまの家を基盤にしたまま、両親がいる実家とは違う家をもったとき、実はこのコラムの冒頭でお話した「米と味噌さえあれば生きていける」という言葉が、もう一度、浮かび上がってきます。

次回も、続きます。





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