Vol.07 「お金では買えない満足」と観光
「買いたい」と思わせるには、『自分が世の中の役に立っている』という感覚を提供することです。
「お金では買えない満足」
逆説的ですが、「お金では買えない満足」こそ、「買いたい!」と思わせるコツだと思います。それには『自分が世の中の役に立っている』という感覚を提供することです。そこで考えたいのが、いま流行りの『SDGs』です。これこそ、行くだけでなく、「関わる」観光を実現するキーワードになるのです。最近、あらゆるところでSDGsが語られるようになりました。街を歩けば、あの17個のマークをいたるところで見ることができます。テレビやネットも同じです。たいていは企業のブランディングとして使われています。
ところで、皆さんがそれをご覧になったとき、どれくらいの割合で「ああ、たしかにこの会社なら、SDGsというのもうなずけるな」と感じるでしょうか?意外と“腑に落ちる”ことのほうが少ないのではないでしょうか?「いま流行りの」という枕言葉をあえて付けましたが、私には、「なにかSDGsにかかわることをやらなければ、、」といった企業側の焦りというか、“取って付けた”ようなかんじが、透けて見えてしまうことが多いのです。
観光とSDGs
観光地でもSDGsを意識した取り組みを進めているところが現れてきました。特に食材についてはさまざまな取り組みがされています。天然のものであれば捕獲数、収穫数を管理したり捕獲方法を工夫したり、さらには養殖に変えたりする、農業では有機農法や規格外のものも使うなど、食材を末永くサステナブルに入手できる方法を模索したり、食品ロスを少なくする工夫がされるようになりました。これら1つ、1つは小さな取り組みかもしれませんが、日本全国で毎日、積み重ねていけば、とても大きなうねりとなるはずです。一方で、こういう取り組みはたいていコストがかかります。そのコストの多くは人件費です。これまでのやり方のほうが効率よく捕獲、栽培できますし、流通にも向いています。SDGsに取り組む観光地の課題は、そのコスト上昇分を売価に転嫁できるかです。コストアップしても、これまで以上に、観光客を呼び込めるかが課題となってきます。今回のコロナ感染症の拡大が、ここに大きな影を落としています。
観光とは?
以前、このコラムでもお話ししましたが、「観光」とは、その街を知ってもらうこと、そして好きになってもらうことです。また、「そこに行く観光」ばかりではなく、「そこに関わる観光」を優先して考えていく時代でもあります。「関わる」のであれば、必ずしも現地にいく必要はありません。いろんなことが考えられるでしょう。たとえば、毎日、海に沈む夕陽をライブ中継している街があって、それをよく見ている都会の方がいて、その方がSNSで紹介してくれるのも「関わる」です。もっと簡単にふるさと納税をしてもらう、でもいいです。都会の方が持っているノウハウやスキルをその街の子どもたちに教える、などというのも「関わる」です。このとき教えてもらう子どもたちは与えられる側ですが、与える側の都会の方のほうが、おそらく満足度は高いと思います。こういう形なら与える側の満足感を高める仕組みがつくりやすいのではないでしょうか?
こうして観光地側は、社会課題を解決してもらえばよいですし、都会側は課題解決に貢献したという実感が持てればいいのです。
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