マーケティングを再定義

2020/12/05

◆Marketing_1

t f B! P L

Vol.7 『SDGsなマーケティング』

前回の最後に旅館の『陣屋』をご紹介しました。さらに深堀りしてお話ししましょう。


SDGsなマーケティング

従業員の満足度向上が顧客サービスの向上につながる。なら、従業員の満足度を上げるマーケティングを考えるという戦略もあり、ということです。これまでマーケティングといえば『顧客』が対象でした。「客の客」という発想はあっても、対象が「従業員」という考え方はありませんでした。もちろん陣屋の手法も、最後は顧客へのマーケティングであることには変わりはないのですが、正確には「こういうアプローチの方法はなかった」と思います。少し前なら、「うちは従業員を一番に考えています」などと言ってしまったら、お客さんからは「客より身内が大事なのか!」と言い返されそうな時代もありました。でもいまでは、「従業員を大切にしているなら、客も大切にしてくれるだろう」と考える方も増えたような気がします。ほかにも、多少、料金は高くなっても、なるべく地元のものを使ったり、扱ったりすることも、理解されるようになってきたのではないでしょうか?これらを、『SDGsなマーケティング』手法と呼びたいと思います。


マーケティングと経営戦略

前回から少し経営寄りの話になってきました。マーケティング戦略というより経営戦略といったほうが正しいかもしれませんが、「経営はマーケティング戦略そのもの」と私は考えています。会社というものは売上を作らなければ存在意義がありません。その売上をつくる戦略こそがマーケティングだと考えているからです。

前回のコラムに書いた3Mやグーグルのように、20%は仕事とは関係ないことをしてもかまわない、という施策。定休日をつくるくらい、しっかり従業員を休ませたことが、結果として利益増につながった旅館。これらは、いい商品、いいサービスを生み出すための施策で、マーケティングの4Pでいえば「Product」の範疇です。ただ、このような施策を決定、実行できるのは経営者しかいません。これはほぼ経営戦略でもあります。


「なんちゃって」は絶対NG

もう1つ、京都にある『佰食屋』という食堂をご紹介したいと思います。ここはほぼステーキ丼だけの単品の食堂です。お店の名前の通り、1日に100食しか売りません。味もコスパも良いので、朝11時に開店して午後2時ごろには売り切れてしまいます。こんなに人気ならもっと売ればいいのにとか、夜も営業すればいいのにとか、思いますが、100食と限定することで従業員の働き方が変わり、飲食店に勤めながら自分の時間も持てる、だから接客もきちんとできるようになる、と店主は言っています。それ以外にももっと大きな思いがあって経営されているですが、ご興味がある方は、この方の著書『売上を減らそう』を読んでみてください。

いま、このお店をご紹介したのは、SDGsなマーケティング手法もありとは言っても、「なんちゃってSDGs」ならやらないほうがいい、ということをお話ししたかったのです。

『佰食屋』の経営者は、飲食業界の給与水準の低さと、それに反比例した労働時間の長さを憂いて起業されたそうです。これでは働く人は疲れ切ってしまって満足に接客できないだけでなく、普通に手に入れられるゆとりも得られない。そうして考えたのが「1日、100食限定」のお店なのです。解決したい課題とそれを解決する手法を、だれが見ても『腑に落ちる』ものにできなければ「なんちゃって」です。いま流行りのSDGsではありますが、ここに大きな落とし穴があります。

次回に続きます。





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