「フードツーリズムマイスター」ってどんな仕事?

2021/01/15

◆Tourism_1

t f B! P L

Vol.08 本当の課題は?

前回、SDGsに取り組む観光地側が、そのコスト上昇分を売価に転嫁できるか?という課題を、もう少し深彫りします。


かけ声倒れに終わった「観光立国」

2020年の2月まで、私は出張や旅行などで国内各地を訪れていました。どこに行っても外国人観光客がいて、それにつれ日本人の観光客も増えていました。お世話になる飲食店やホテルもにぎわっているところが多かったのですが、いつも気になっていたのは、そこで働く方々から漂う「疲れ」でした。売上も増えて、儲かっているのではないかと思っていたのに、それが「うれしい」というよりは「もう疲れた」という表情なのです。

2013年9月に東京でのオリンピック開催が決まり、その2013年に訪日外国人客は初めて1000万人を超えました。2年後の2015年には1974万人とほぼ倍増。政府は「2020年にインバウンド4000万人」という目標を掲げ、まんざら実現できない数字ではない、と誰もが思っていました。それが、2018年から伸び率は急激に小さくなり、下表にあるように、旅行者1人あたりの消費額も微減となりました。2019年に消費額は少し増えたものの、旅行者数は2.2%しか伸びず3188万人に止まりました。そして、2020年、コロナです。



これらの数字をみて思うのは、観光を新たな成長産業分野としたところまではよかったのですが、産業界側の意識改革は進まず、結局、「旅行の安売り」をしていたに過ぎなかったのではということです。インバウンド客が増え続けているころ、日本では深刻な人手不足に陥っていました。それなのに政府統計の産業別給与支出をみると、「宿泊業」と「飲食業」が長年、最下位を競っています。薄利多売の安売り競争では、「疲れ」がみえるのもうなずけます。

この上、さらにSDGsに取り組めと言われても、もう手が回らない状況だったでしょう。どこかでこの負のスパイラルから抜け出す必要がありました。それがコロナによってリセットされたのです。


まず域内の経済を回す

自由な往来が望めないいま、観光地側が取り組むべきことは、観光業とは関係のない方々も巻き込んで、観光地全体の経済をまずは域内で回していくことです。それにSDGsをからませ、地域全体をブランディングしていくとともに、域外からの投資を呼び込むのです。この取り組みをリードすることができるのは、観光業をはじめ、これまで実際に域外の方を接客してきた皆さんしかいないと思います。域外の方を対象にビジネスをしていたすべての方のノウハウや知見を集め、地域のどこに魅力があって、ニーズがあるのかを、もう一度、考え、地域のことを皆さんが誇りに思い、守っていこうという気持ちを醸成していくのです。


次に小さな投資を呼び込む

経済を域内で回していきながら、次は域外からの投資の呼び込みです。それには、「小さな投資」を積み重ねていくことから始めます。まずは、100万円程度を目標に、クラウドファンディングを企画することをおススメしたいです。たとえば、新鮮な魚介が魅力の観光地では漁業関係者、卸、宿泊施設や飲食店、または加工会社などはそれぞれに取引がありますが、この関係者が一堂に集まってビジネスプランを考えるということは、いままでなかったのではないでしょうか?小さなビジネスを企画し、自らではなく域外から投資してもらって立ち上げるというのは、これまであまりやってこなかった手法です。


次回に続きます。




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