この10年近く続いた「観光立国」ブーム。でも、そもそも何をしたかったんでしたっけ?誰のための観光だったのか考え直す時が来ています。
観光客を連れてきたのは誰?
これまで地域に観光客を連れてきたのは、ほとんどが都会に本社を置く旅行会社やOTA(オンライントラベルエージェンシー)でした。「旅行の安売り」をしていたのもこれらの会社ですが、だからといって暴利をむさぼっていたわけではありません。その証拠に対面で販売していた旅行会社はコロナ下でどんどん店舗を閉めています。OTAは「最安値」を探すためのツールで、宿泊業にとっては微妙な存在かもしれませんが、競争の激しい旅行業界では仕方ありません。
一方で、顧客リストを持っているのはこれらの会社です。これまで一番、大事なリソースが、域内の事業者には蓄積されてこなかったのです。では、顧客リストを持っている旅行会社が、そのノウハウをほかに活かせるか?というと、旅行しか売ってこなかったために、大半の会社は活かすことができません。とってももったいない話です。旅行という「ツール」が自由に使えなくなったいま、旅行会社が持っているリソースを、観光地自らが持ち、活かすように舵を切るときが来たのです。
まずは「食」から
前回、域内の関係者が一堂に集まってビジネスを考えるべきと書きました。ただ、あまり考えすぎず、始められるところからやってみることです。まず動画を撮ってみましょう。私の好きな魚の話ばかりで恐縮ですが、漁港に魚が水揚げされるところから、競りのようす、競り落とした魚が域内の料理店に持ち込まれ、どんな料理に仕立てられるのか、それをお客さんが召し上がっているところまでを動画にしてみてください。季節によってどんな魚が水揚げされているのか、それを地元の料理人はどう調理するのか、そのなかに、その地方独特の魚種や調理法、調味料などがあるといいです。漁師さんに頼んで漁のようすを撮影してもらうのも迫力があります。網が引き上げられ魚がピチピチと跳ねている風景はやはり楽しいものです。養殖でもいいですし、潜って獲っているところなども見ていて楽しいです。料理もプロの方ばかりでなく、同じ魚を使った自慢の家庭料理でもいいと思います。
こういった動画を少しずつでいいので公開していくのです。公開したところで簡単に見てもらえるわけではありませんが、コツコツやっていくしかありません。まずは地元から
この動画を見てくれる方は誰だと思いますか?おそらく最初は域内の地元の方だと思います。地元の方であれば、魚を買う、料理を食べに行くといったことも手軽にできます。動画を公開したいという方もいらっしゃるでしょう。こうして少しずつ、域内で「動き」をつくっていくのです。
動きを感じられるようになったら、その中にいよいよSDGsのスパイスを入れていきましょう。水産資源を守るために地元ではどんな取り組みをしているのか、捨てられる魚を使って新メニューを考えてみた、どんな小さな活動でもいいので動画にしましょう。
「観光」はそもそも地域の活性化のために取り組んでいたはずです。域内にいらっしゃる観光客は何を目当てに来ていましたか?私はその多くは「食」だと思っています。地元の人たちでもう一度、地元の「食」を再発見し、極めていきましょう。
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