「田んぼ」は生きるエネルギーを生み出す装置

2021/11/15

◆Social_1

t f B! P L

Vol.15 『箱よりも仕組み』

いまの自治体は「社会課題の多さ」が自慢のようです。


課題を競う

最近、いくつかの自治体の方がプレゼンするセミナーを聴講する機会がありました。聴講者はその街でワーケーションをするとか、サテライトオフィスを作るとか、何らかの実証実験を行うといったことを考えている企業で、自治体はこういった企業を誘致したいのです。数年前までなら、車で10分も走れば豊かな自然があります、海の幸も山の幸も豊富、家賃や生活費も都会の半分といった、それなりの「売り文句」が必ずありましたが、いまは高齢化率50%超、担い手不足で第1次産業が衰退し、増え続ける耕作放棄地、手入れされない山林、獣害、高校がなく16歳になると若者は街を出るなど、その街が抱える社会課題を並べるプレゼンばかりでした。まるで社会課題があればあるほど魅力!課題自慢!とでも言いたげなプレゼン。そして最後は判で押したように、コワーキングスペースと『SDGs』です。


実は企業も課題を探している

少し極端な言い方ですが、いまこうした社会課題があふれる地方で、企業が課題解決に取り組めば、その企業は「SDGsに貢献している」といえるようになる、そんな関係が成り立つ時代になってきたとも言えます。もちろん課題なら何でもいいわけではありません。「CSR(企業の社会的責任)」と言われていた時代であれば本業とはあまり関係のない社会貢献でもアピールできましたが、いまやSDGsは、「なんちゃって」では誰も見向きもしませんし、株価も下がってしまいます。その企業の本業に根差した課題を見つけ、解決を目指さなければやる意味はありません。ただ、課題解決を目指すのに自治体の協力が得られることは、企業にとってはとても心強いことです。だからこそ、こういったセミナーが成立するのです。


自治体も同じ

「社会と環境と経済を三位一体となって循環させていく」という主旨のもと、政府は「SDGs未来都市」を推進し、毎年、30もの市町村を認定しています。SDGsに取り組まなければならないのは自治体も同じですが、このセミナーでのプレゼンを聴いていて、それをきちんと理解しているのか、私には疑問に思いました。用意したものはコワーキング施設。結局、箱モノに逆戻りです。山ほどある社会課題を自ら解決することはあきらめ、企業に丸投げ、解決してくれる企業に来てほしい、と言っているようにも思えます。自治体は「箱モノ」ではなく、「仕組み」をつくることを考えるべきです。


課題を解決するのは誰?

次世代に向けて、いまの社会課題を解決していくのは誰でしょうか?「2050年にカーボンニュートラルを実現する」という政府目標があります。いま50代以上の方であれば、「そのころ自分は生きているかなあ?」と思う方もいるでしょう。30代以上でも最前線ではなくなるころです。社会課題の解決に一番、汗を流すのはいまの20代以下の人たちです。日本ではこの世代の人口がじわじわと減り、高校がなくなる町村も増えています。この世代の人たちが課題解決に取り組める環境を地元で整えてあげることこそが、いまの現役世代が最優先で取り組むべきことです。実は、それを企業も求めています。この2つをつなぐ仕組みが必要で、その仕組みへの入り口が、来年度に改訂される新学習指導要領で高校の新科目になる「探求」と、外部の方が先生として登壇する「出前授業」なのです。

私は切実に、この提案に耳を傾けてくれる自治体を探しています。





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