このコラムは今回が最終回。いったん区切りとしたいと思います。
あらためて
これまでも何度か書いていますが、マーケティングとは、「売るのではなく、売れる『仕組み』をつくること」であり、実務者がやるべきことは『試行錯誤』、なかでももっとも重要なのが仮説立案です。
マーケティングは「広告・宣伝」や「営業戦略立案」だと考えていらっしゃる方がとても多いイメージがあるのですが、これらはマーケティングのほんの一部です。
一人ではできない
マーケティングの『4P』と呼ばれるものがあります。私はこのなかで最初のP、つまり「Product」に常に注目してきました。たとえばメーカーであれば、開発者が作りたいもの、製造現場が作りやすいものを新製品にしてしまうことはよくあることです。購入する側のニーズに合わせなければモノもサービスも売れません。とはいえ購入側のニーズなんて購入者本人にもわからないのです。それを考え抜いて新しいものにチャレンジしなければならない時代になりました。そんななかで1つの考え方となるのが「かけ合わせ」です。「●●×IT・AI」というのが多いですが、今年、こけしのなかにLED電球を仕込み、もしものときは非常灯や懐中電灯にもなるこけしがメディアに取り上げられました。
ここで注目してほしいのは、「伝統工芸品×防災意識の高まり」という目の付け所の良さだけでなく、「こけし職人×LEDメーカー」というコラボです。実はこのこけしは2008年から作られていました。それが再び、注目されているのです。こけしメーカーが地場企業とコラボできないかと考え、実現したものだそうです。かけ合わせを実現するには協業相手が必須。それが図にもある5つ目のP、「Partner」です。いまや、何をつくるか、どんなビジネスをするか、だけでなく、誰とつくるか、誰と組むか、がビジネスの成否を決めるようになってきました。
「Product」と「Partner」が変えるもの
時に、ものづくり、メーカーの場合、開発、設計、製造、営業、マーケティングなどが別部門であまり風通しのよくない状態のまま、部分最適で動いていることがあります。「Product」に着目するなら、開発、設計、製造などの部門とマーケティング部門が話し合わなければなりません。そのために組織を組み直すことも必要です。
また「Partner」に着目するなら、他社に生産をまかせ、自社は商品開発とマーケティングに特化するといった戦略も、いまやふつうに見られるようになりました。この場合、自社はメーカーから商社へと業態を変えることになります。このように、マーケティングは組織も業態も変えるきっかけにもなるのです。さらに、こうしてマーケティング目線によって従来から変わった組織や他社との協業体制は、「売れる仕組みの構築」という目的を共有することができます。こうやったらもっと売れるものがつくれるのではないか?と試行錯誤を繰り返す仲間になるのです。
最後に
マーケティングそのものは「目的」ではありません。手段、戦術にすぎません。なんの手段かといえば、「これまでとは違う状態」にするためのものです。マーケティングを使って短期に試行錯誤を繰り返し、「経営をデザインすること」が目的なのです。
<おわり>
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