Insight Vol.12

2021/12/25

◆Insight

t f B! P L

『南三陸、ふたたび』

12月6日、ほぼ8年ぶりに南三陸町へ向かった。


ホテルは大盛況

前回は大人数で丘の上の民宿に泊まったが、その宿がどこだったかも忘れてしまった。今回は町の南にある海を臨む立派な温泉ホテルに泊まることにした。土日を使って来たかったが金曜と土曜でも、日曜と月曜でもこの温泉ホテルは満室。仕方なく月曜、火曜の日程にした。仙台からレンタカーを借り、三陸自動車道をいけば約1時間半。4時ごろにホテルに到着したが、チェックインまでに10分ほど待たされるほどの混雑ぶり。今夜も満室のようだ。部屋の窓辺にはウミネコが物欲しそうな顔をしてとまっていた。ようやく露天風呂にいくと目の前に日暮れ前の志津川湾が、波もなく穏やかに広がる。


翌朝、ホテルから語り部ツアーに参加

時計が止まったままの戸倉中学校、そのさらに上にできた新しい戸倉地区、多くの高齢者が屋上で難を逃れた高野会館などを回り、バスに乗ったままだが外を見ながら語り部の話を聞く。最後は防災対策庁舎。8年前、庁舎のまわりは震災から2年半が経っていたにもかかわらず、ほぼすべてが流され更地のままだった。だが、8年ぶりの南三陸町はいたるところ道路が盛り土され、川にも高い堤防ができており、防災対策庁舎は盛り土された道路の上から見下ろすようになっていた。庁舎の横には小山のような丘が作られ、一帯は公園として整備されている。8年でこんなに変わったのか、、。バスの車窓からはまるですり鉢の底のようなところに鉄骨だけになった庁舎が小さく見えるだけだった。


志津川高校サッカー部

語り部ツアーのあと、今度はレンタカーで志津川高校に向かう。8年前、この志津川高校のサッカー部と試合をすることになり、我々は十数人でこの町にやってきた。自分はもう20年ほどフットサルをやっているが、その仲間がどういう縁かわからないがこの話を持ってきた。震災の現場を一度は見たかったし、少しでも高校生たちのためになればという気持ちで参加した。志津川高校は小高い丘の上にあり、おかげで津波の被害には会わず、避難場所にもなっていた。

8年前、校門に向かう坂道を上がっていったとき、遠くに海が見え、「あっ!」と声が出た。ここから撮ったビデオ映像が何度もニュース番組で紹介されていたのを思い出したからだ。そのビデオにはこちらに迫りくる津波と、まだ丘の下のほうから登ってくるおばあさんが映っていた。「おばあちゃん!早く!」という声も入っていた。あの映像はここから撮っていたんだ、とわかり、思わず手を合わせた。いま、あらためてその場所に立つ。見える景色は変わってしまったが、もう一度、手を合わせた。


サッカーをやったときグランドの半分は仮設住宅だったが、それももうない。試合は1vs0で我々が勝ってしまったが手加減するほうが失礼だっただろう。試合後、BBQをさせていただいたのだが生徒の子たちはほとんど食べてくれなかった。先生からは事前に「生徒たちから話さない限り、震災のときの話はしないでくれ」と言われていたが、そもそも会話自体、ほとんど成り立たない状態だった。


さんさん商店街、そして復興とは、支援とは?

高校を後にして、南三陸さんさん商店街に向かった。あのときはホントにイベント会場にある出店のような仮設商店ばかり、いまも仮設のようなものだがだいぶきれいになった。平日の昼間、客はまばら。川をはさんで対岸には防災対策庁舎があるが、川の両岸には高い堤防が作られ、隈研吾氏が設計したという橋が架かっていた。橋を渡ってもう一度、庁舎をみた。遠くからみているからだが、ひと回り小さくなったような気がする。

寒さで少しさみしい感じがする商店街。ホテルに大勢いた人はどうしたのかと思ったが、ホテルが混んでいたのは宮城県民割というのをやっているからだった。県民ならあのホテルに1拍2食付きで数千円で泊まれるらしい。その多くは仙台駅からの無料送迎バスに乗ってきて、翌朝、送迎バスで帰ってしまう。あの大勢の団体は町中を見ない。宮城県の人だから中には被災した人もいるだろうし、南三陸に何度も来ている人もいるだろう。もう復興とかというモードではないのかもしれない。

8年後のいまも、サッカーの試合をしたことであの子たちに何かを残せたのだろうか?と考えてしまう。さんさん商店街では海鮮丼を食べ、お土産を買った。あのときもそうだったが、とにかく街中でたくさん食べ、飲んで、お土産を買う。結局、自分ができることはここでお金を使うことだけだ。それが自分にできるすべて、それはいまも変わらない。

ただ、今回、もう1つできることがあると思った。

それは、いつまでもこの町のことを忘れないことだと思う。また来ます。



皆様、今年もコラムをお読みいただきありがとうございました。

良いお年をお迎えください。





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